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こんな天地人が見たかった!5

1 :日曜8時の名無しさん:2014/01/19(日) 21:10:52.37 ID:I3lBvJob
いつも国替えは突然じゃな。

2 :日曜8時の名無しさん:2014/01/19(日) 21:16:42.59 ID:I3lBvJob
<これまでのお話>

小田原篇の冒頭、第四二話上田の(1)で、
大間違いをしでかした筆者は誤魔化すために、
<お正月特別企画>と称し、
第一話から第九話まで、書き直そうとしている。

さらにいえば、なんどもスレたてを試みたが、
たたなかったので今度もたたないだろうと、
sage忘れて、とても恥ずかしいことになっている。

3 :日曜8時の名無しさん:2014/01/19(日) 22:44:03.93 ID:I3lBvJob
第三話「高坂弾正」(9)

 日が暮れてきた。
長篠敗戦の翌日・天正三年五月二二日も終わろうとしている。

 土屋惣藏殿は、勝頼公の側近。曽根内匠助殿と真田昌幸殿は、
信玄公からわが眼であると二人併せて称賛された幕僚。
再建される武田軍の中枢を担う人物であることは間違いない。

「それがしの主人上杉景勝は、今年正月謙信公の正式な養子となり
謙信公の後継者として自他ともに認める立場となりましたが、
謙信公には、もうお一人養子にされておる三郎殿がおられます。
三郎殿は、北条を後ろ盾にされるお人。
さすれば、われらは武田に昵懇願いたいと考えておりまする」
さすが兼続、機会を逃さず仕事する。

「明日、兵を整え、甲府に凱旋する。
みな、休まれよ。樋口殿も、甲府に来られるか」
「いや一日も早く帰り、こたびの戦の詳細、
報告したいと考えております」

「御子息は、長篠城の抑えとして有海村で待機しておるところ
酒井率いる徳川の別働隊に強襲されて、討ち死にしたようでございまする」
真田だけ残り、高坂に報告している。
「調べてくれたのか。ありがたい。
今度の敗戦は、信じられないほどの大敗じゃな。
侍大将が、これほど戦死する戦は、わしも初めてじゃ。
もう武田は、単独で信長に対抗することはできないじゃろうな
わしが一番心配しておるのは、最強武田の信念が揺らいだことじゃ。
これまでは、戦えば、必ず勝っておったからな」

「戦力回復の時間を稼ぐためにも、外交が大切ということですな。
それにしても、捕まえた上杉の細作、なかなか大変な男ですな」

 

4 :日曜8時の名無しさん:2014/01/19(日) 23:05:14.69 ID:I3lBvJob
第三話「高坂弾正」(10)

「あれほどの切れ者、そうそうお目にかかることはできまいて。
どうも、わしと話をしたいがため、わざと捕まったようじゃ」
「なんと、まあ」
「護衛がついておったようじゃが、捕まえたときは一人じゃった。
護衛を下がらせたようじゃな」
「殺されるとは、思わなかったのじゃろうか」
「いや長篠で大敗したので、武田に上杉と戦う能力も意志もなくなった。
むしろ上杉と和睦したいと考えるじゃろう。
自分に危害を加えるようなことはあるまいと、瞬時に見切ったようじゃ。
縛り上げられて、わしのまえに連行されてきたが、
あきれるほど、堂々としていた」
「なんと」

「若いうえに、姿かたちの美しい美男じゃから
どうしても軽く見てしまいがちじゃが、
あれは臥龍鳳雛のたぐいの男じゃ。
上杉を背負うようなものになるじゃろう」
ここで高坂は、真田の顔を覗き込む。
「本来であれば、土屋惣藏殿に任せるべきじゃろう。
が、とても土屋殿が相手できるような男ではない。
わしが相手をするつもりじゃが、
そなたも、あの男のことは、心に留めていてもらいたい」
「はっ。
それがしは、明日、信濃衆・西上野衆を率いて、帰郷するつもりですが
樋口殿と同行いたします」
「それが、よいじゃろ」

5 :日曜8時の名無しさん:2014/01/19(日) 23:26:01.60 ID:I3lBvJob
第四話「謙信の義」

 華やかに飾り立てた軍勢が、甲府に向けて凱旋する。
「樋口殿、武田は北信に大軍を駐留させることはできなくなった。
見ての通りじゃ。謙信公に伝えてくだされ」
高坂は、そう言い残して、勝頼公を庇護するように、
そばを離れぬように馬を並べて、飯田を発った。

「心なしか、風林火山の旗も寂しげじゃな」
見送る真田が呟く。
「樋口殿、そなたは、わしが送っていこう」
有難い。真田は、勝頼公の幕僚、いろいろな情報がとれそうじゃ。

 

6 :日曜8時の名無しさん:2014/01/20(月) 20:51:45.05 ID:/xtfptdK
第四話「謙信の義」(2)
 
訂正 臥龍鳳雛⇒伏龍鳳雛

「曽根殿、後は頼みいる」
曽根内匠助を残して、真田も飯田を発つ。兼続も同行する。

真田の率いる軍勢は二千余、
足を引きずっている者や荷車に載せられている者もいる。
「動かせないほど重傷のものは飯田に置いてきたが、
動かせるものは一日も早く故郷に帰してやりたい。
やっぱり、家が一番じゃからな」
さきほど、高坂殿が率いていった海津城の精鋭と比べて、
みすぼらしいから、言い訳しておるのじゃろうか。

「信長は軍を返しておるようじゃ」
真田と兼続、馬を並べて話しながら進んでいる。
「こたびは、信長にしてやられたようでございまするな」
「ううむ。信長は石山合戦で、
雑賀の鉄砲隊に何度も煮え湯を飲まされておるゆえ、
それをまねしたのじゃろうな」
真田は、はーっと溜息をついた。

「それにしても、武田の皆様には感心しました。
得意淡然・失意泰然というが、これほどの大敗北を喫しておるのに
みな泰然としておるのに、驚いておりまする」
真田は三十前後の年齢と見当をつけた兼続、丁寧に話す。

「それは買被りじゃ。みな動転しておるのじゃ。わしもそうじゃ。
山県殿や馬場殿は、軍神ともいうべきお人じゃった。
山県殿が陣頭にたてば、みな奮い立った。
馬場殿は、生涯一度も手傷を負われたことのないお人じゃった。
お二人が戦死されたことがいまだに信じられないのじゃ。
内藤殿も戦死された。信じられぬ。
武田が敗れたことも信じられぬ。
長篠敗戦より、みなおかしいのじゃ」
ふうむ。それがしに対する反応が薄かったのも、そのせいじゃったのかな。

7 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/20(月) 21:57:59.61 ID:/xtfptdK
第四話「謙信の義」(3)

「わしの二人の兄も戦死された。
右翼の先鋒馬場殿の後ろに控える第二陣の部隊を率いておったのじゃが、
後退する途中で戦死したようじゃ。
その最後の様子がまったくつかめないのじゃ。
家臣まで、みな戦死しておるようなのじゃ。
昨日から探しておるのじゃが、知った顔に一人も行き当らぬ。
いったい何があったのか。考えると怖くて仕方がない」
ふうーと真田がまた溜息をつく。

「わしの初陣は第四回川中島の戦いじゃった」
ふうむ。
「それから、何十回も戦したが、一度も負けたことがなかった。
それゆえ、われらは武田の軍勢を、扶桑随一・天下最強と信じるようになった。
たしかに上杉は難敵じゃが、負けることはないと思っておった。
織田や徳川など、ひねりつぶすつもりじゃた」
また真田は溜息をつく。

8 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/21(火) 20:29:08.45 ID:j6StnlOe
<反省会>

「勝頼公は、五月いっぱい信濃にいたと書いてあったぞ」
「はっ。筆者も、後で気がついたようでございまする」
「でたな。ヘンタイロリコンロガッパ」
「寿限無ですか。ともかく、信長より謙信公に出された
長篠に関する書状の日付が六月十三日付でございまするから
その後に、帰り着けばよいのに、えらく急いでおりまするな」
「高坂殿も、翌日に到着するのは、いかにも無理がある。
書き直さねばならぬな」
「きりがないのう」
「はっ。書き直しても、この惨状でございまする」
「とぼけて、日にちを十日くらい進めるのじゃ。自然にな」

9 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/21(火) 22:19:04.00 ID:j6StnlOe
第四話「謙信の義」(4)

「信玄公が生きておられれば、
今ごろ信長など討ち果たしておったはずじゃ」
溜息をつきながら、愚痴りながら馬を進める真田昌幸。

「信玄公とは、どのようなお方じゃったのか」
やはり、武田を知るためには、信玄のことを訊かねばならぬようじゃな。

「わしは、七歳のとき人質として甲府に送られた。
武田が村上義清を越後に追い払ってくれたので、
そのおかげで旧領を回復することができた、
わが父幸隆が忠誠の証として送ったのじゃ。
ところが新参の他国者の人質に過ぎないわしに
信玄公は目をかけてくださったのじゃ。
奥近習に抜擢され、信玄公の身辺のお世話をすることとなった」
ほお。
「曽根殿や、長篠で戦死した土屋昌続殿などが同僚じゃった」
土屋惣藏殿の兄上様じゃな。

10 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/22(水) 23:21:55.59 ID:hMz3JMJh
第四話「謙信の義」(5)

「信玄公は、一言でいえば、ものぐさなお方じゃったな」
なんと。なんと。意外なことをいう真田。

「雪隠に、書物を持ち込んで、一日中過ごすようなお方じゃった」
「それは安全確保のためではないじゃろうか」
「それもあるじゃろうが、
ともかく何もかも面倒くさがりの億劫者であられたな」
ふうむ。意外じゃ。

「新羅三郎義光公以来五百年近く連綿とその血脈を伝える尊貴なお方じゃから
甲斐では、神の如く崇拝されておったが、とにかく、ぐうたらなのじゃ」
真田は、側近として、信玄公に傾倒していたのではないのじゃろうか。

「しかし、人を使うことはうまかったな。
信玄公は、人は石垣 人は城 人は掘り 情けは味方 仇は敵なり
と、常々仰せじゃった」
ほおお。
「わしなど奥近習六人が選抜されて、耳利きとして、家中の者どもの評判を
収集して、報告するよう命じられたことがある。その指示は細かいものじゃ
った」
ふうむ。
「古参や新参の区別なく、
手柄話に虚実の程度はどれほどか。
手柄があっても嘘を常につく人物か。
同僚との付き合い方はどうか。
身分の高い家臣には慇懃であるが、
他には素っ気ない態度をとる人物であるか。
酒に飲まれる人物か。
同僚を怒らせるようなことを平気でする人物か。
武具などの手入れや入れ替えなどに注意を払う人物か。
武具などには凝るが鍛錬を怠る人物か。
これらを常に念頭に置いて、人を観察し一切の長所短所を報告せよ。
と仰せになられたのじゃ」
ほおおお。
確かに、思慮深いお方のようじゃな。
しかも、それを真田など、若造に任せるのは、
同時に、真田なども育てる考えもあったんじゃろうな。
なかなか、奥が深いおかたのようじゃな、

11 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/23(木) 22:50:23.15 ID:AaW3cpVT
第四話「謙信の義」(6)

「自分の欲望の赴くまま、やりたい放題で、
女にも男にもだらしないお人でもあった。
他の男に懸想したことをとがめられて、
高坂殿に謝る手紙を書かされたこともあったそうじゃ」
真田は、信玄公を批判しておるのじゃろうか?

黙ってしまった真田、そっと横顔を見ると、真田は泣いていた。
「真田の三男であるわしに、武田の一族である武藤を継がせてくれた。
わしを将来、武田の柱石となる男と見込んでくださっておったのじゃ。
信玄公は、わしのためだけに不動の呪文を百遍唱えてくださっていた。
それなのに」
真田は、泣いた顔を、見せないように横を向いて
「わしは信玄公に合わせる顔がない」とつぶやく。

「長篠敗戦の根本的な原因は、信玄公がおられなかったことじゃ。
信玄公が生きておられれば、馬場殿も山県殿も、遠慮せずに
信玄公をやりこめてでも、撤退させたじゃろうて。
ところが、勝頼公には対しては、遠慮があった。
信玄公の跡継ぎとして、努力されておられる勝頼公が、
いじらしく思えて、強いことが言えなかったのじゃ」
ほお。
「もっとも、信玄公なら、家臣に言われるまでもなく
撤退しておったじゃろうがな」
ふうむ。
「信玄公は、危ない橋は決して渡らないお人じゃからな」

12 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/26(日) 00:17:39.59 ID:8tMQf+nj
第四話「謙信の義」(7)

信玄公というお人は、細心で思慮深く世故に長けたお人のように思えるな。
それに、家臣に慕われ愛されておったようじゃな。


「樋口殿、そなたは米の飯を食べておるか」
真田が、おかしなことを訊いてくる。
「はい」
おまえは、蕎麦でも食うておるのか。
「やはりそうか。越後は、やはり米どころじゃな。
川中島の戦の時、上杉の補給部隊を攻撃したことがあったのじゃが、
鹵獲した軍糧がすべて、米じゃったので、幕僚みな驚いておったわ。
甲信の民は、めったに米の飯を食うことがない。
山が多く、水利が悪く、田畑は少ないからじゃ」

ふうむ。
「甲斐の盆地は、笛吹川と釜無川に挟まれて、洪水が多いところじゃが
信玄公は、堤防を築いて、川の氾濫を食い止めようとした。
結局十五年かかった」
ふうむ。
「信濃経略の戦と並行して、そんなこともやっておられたのか
金がいくらあっても足りなかったじゃろうな」
「このころは鉱山から、結構金が出ておった故、助かっておったな」
ふうむ。
今は、出てないということかな。

13 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/26(日) 14:19:18.78 ID:8tMQf+nj
第四話「謙信の義」(8)

「山国である甲信の貧しさ。
これは、越後のそなたには、わからぬじゃろうな」
なんじゃ。
「海がないのじゃ。海がないゆえ、
都への物流の大動脈に物資を載せることができぬ。
自給自足の足腰の弱い経済なのじゃ。
小さな飢饉でも、すぐに餓死者が発生する。
みな、飢餓線上に生きておるのじゃ」
ふうむ。
「越後上布など物産に恵まれ、
大きな港がいくつもあり
都と繋がっておる。
数万の人口を擁する都市もある。
銀の産出量も国内屈指じゃろ」
ふうむ。
「そもそも、謙信公の義などというのは
豊かな国に住むものの驕りじゃ」

14 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/27(月) 23:22:41.47 ID:r560KLA5
第四話「謙信の義」(9)

「そなた、永禄四年の川中島の戦のことは知っておるか。
わしは初陣で、信玄公の旗本として本陣に詰めておった。
高坂殿が別働隊一万二千を率いて、妻女山を奇襲し、
後退してきた上杉勢を本陣勢八千で挟み撃ちにする作戦じゃった」
子供の時から、何度も何度も聞いておる。

「ところが謙信公は、武田の作戦を見破っており、
われらの裏をかいて、本陣に攻め込んできた」
百も承知じゃ。何が言いたいのじゃ。

「信玄公は、落ち着き払って、
女山別働隊が戻ってくるまでの辛抱じゃ、
陣を固めよ と使い番を各隊に走らせたが
血気にはやった義信様が、
上杉の巧妙な駆け引きに釣り出されて
陣が崩れそうになった」
まったく、意図がわからぬ。

「大変な激戦となった。義信様を助けようとした、
典厩信繁様が討ち死にし、両角豊後守殿も討ち死にじゃ。
他の部隊も、上杉の鋭鋒を受けきれず、陣形を
本陣勢で無傷なのは、飯富昌景殿の部隊と穴山様の後備だけとなり
背後の千曲川に押しこめられて、ついに全滅か、
という時に、ようやく別働隊が戻ってきて、形勢逆転じゃ」
自慢話がしたいのか。それならば、相手が違うぞ。

15 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/28(火) 23:15:07.98 ID:QjfTOuYc
第四話「謙信の義」(10)

「それで」
すこし、冷たい口調の兼続。
「妻女山別働隊の参戦で、上杉勢は総崩れとなり
上杉の戦死者は三千を超えた。
そして川中島から奥四郡も武田領になることになった」
何が言いたいのじゃろう

「しかし、われらに勝利の喜びはなかった。
本陣勢の戦死者は四千を超え
それになにより、典厩信繁様が戦死されておったからな」
ふうむ。

「信繁様の首のない亡骸が、本陣に運ばれたとき
信玄公は、取りすがって号泣された」
ふうむ。

16 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/29(水) 23:47:03.79 ID:DlhLnwKs
第四話「謙信の義」(11)

「典厩信繁様の討ち死には、武田にとって痛恨の出来事じゃった。
もし、信繁様が生きておられたら義信様も自殺することはなかったじゃろう。
きっと信玄公と義信様の対立を収めてくださったはずじゃ」
川中島で武田が失ったものは大きかったのじゃな。

「北条・今川と強国に隣接した武田が国を保つためには
甲斐だけではなく信濃が、どうしても必要じゃったのじゃ。
それゆえ、信玄公は、どんな犠牲を払っても、信濃経略を完遂された。
しかし、謙信公はどうじゃろう」
さすがに、かつての宿敵とはいえ、これから同盟を結ぼうとする謙信のこと
を悪しざまに言いにくいのか、真田は言葉を選んでいるようだ

「謙信公は、北信の豪族のために、武田に奪われた領地を取り戻すために
戦うことを標榜されておったが、それは本心じゃろうか」
何も答えない兼続

17 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/01/30(木) 23:13:10.74 ID:Jpe+Kzx6
第四話「謙信の義」(12)

「われらから見ると、謙信公は不思議なお人じゃ。
戦をすれば戦費がかさみ、兵は死に、傷つく。
戦うためには、応分の報酬を前もって用意しておかねば
兵どもを戦わせることはできないのではないか」
兼続、なにも言わない

「謙信公の褒美は、感状や一杯の杯だけじゃと聞くが、
それで、関東や北陸や信濃で、戦い続けておられるのじゃろ。
領地を増やして、家臣どもに与えるような考えはないのじゃろ」

黙って聞いていた兼続、ようやく口を開く。

「川中島の戦いは、武田の北進を挫くためじゃ。
武田は、北の海を欲していたのじゃろ
今川義元が討ち死にして武田が、南進に切り替えたので
川中島の戦は終わったのじゃ」

18 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/01(土) 23:18:06.91 ID:S+MPVmwl
<反省会>

「信玄公は、神格化したままの方がよかったのではないか」
「はっ。筆者もそう思ったのでございまするが、
真田昌幸、本当に信玄公に寵愛されていたようで、驚いたのでございまする」
「どういう意味じゃ」
「一般に、江戸時代を通して家を全うした大名は、よい評判しか残っており
ませぬ。それゆえ、真田の話も、かなり割り引いて考えないといけないと、
先入観で思っておったのですが、本当に小姓の頃から寵愛されていたので驚い
たのでございまする」
「真田の父上様、幸隆殿は北信の経略で大功を上げたお人。
そのことを考えても、当然ではないか」

「謙信公の義というのも、よくわかりませぬなあ」
「これは、宿題じゃな」

「書き直していくのは、どうもやりにくい。
銀英伝の外伝の終りの方みたいじゃ。
時系列では、早いのに話の中身は、
すべてを踏まえたしがらみだらけみたいで」
「そうですな。しかし、小田原攻めとなると
謙信公の関東出撃や、三郎殿のことも、
もう少し勉強したほうがよいのではありませぬか」

19 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/02(日) 00:47:48.31 ID:JkDNU2ZV
第五話「春日山」

「ふうむ。武田が大敗したのか。意外じゃ。何故じゃ」
春日山城に帰り着いた兼続、さっそく景勝に報告する。
「どうも鉄砲にやられたようでございまする」
「鉄砲か。確かに、うるさい兵器じゃが」
「戦場に近づくことができませんでしたので、
詳しいことは分かりませぬが、
武田の名将勇将ことごとく討ち死にしたようでございまする」

20 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/02(日) 15:40:59.49 ID:JkDNU2ZV
第五話「春日山」(2)

「山県昌景、馬場信春、内藤昌秀、原昌胤、土屋昌続、甘利信康、真田信綱・
昌輝、望月義勝、武田信実、三枝昌貞等々が戦死しておりまする」
「なんと。誰が生き残っておるのじゃ。
信玄秘蔵の名将勇将、ことごとく討ち死にしておるのではないか」

「重臣では、高坂弾正殿。幕僚では、真田昌幸殿、曽根昌世殿。
旗本としては、土屋惣藏殿あたりが目ぼしいところかと。
こちらの方々とは、お目にかかってきました。
後、穴山信君殿・信豊殿・一条殿、など一門衆は、健在です」
ふうむ
「これからは、武田と協力して、織田を討つことを考えねばなりますまい」
「なんと。それは」
しばらく景勝考え込む。
「われらにとっては、武田は宿敵じゃ。
恨みつらみの積み重なる相手じゃ。
村上殿のように、武田に自分の領地を奪われておるものもおる。
理性的には、そなたの言う通りじゃが、
現実的には、よほどの工夫が必要じゃな」
あたりを見回した兼続。
「お人払いを」

21 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/02(日) 16:35:42.42 ID:JkDNU2ZV
第五話「春日山」(3)

「武田とつなぎをつけておくことは、
喜平次様にとって、今後大きな力となるやもしれませぬ」
黙って聞いている景勝。

「今年の正月、御館様の正式な御養子となられたことで
後継者のひとりと目されるようになりましたが三郎殿(景虎)がおられます」
「三郎殿は、北条の人質・それゆえ固有の戦力を持っておらぬぞ」
「おそらく、御館様(謙信公)は、越後国主家は喜平次様に継がせ、
関東管領・上野国主家は、三郎殿に継がせるお考えじゃと思料いたしまする」
ふうむ。

「お館様は、伝統や権威をとても大切にされるお人でございまする。
それが証拠に、関東の戦には、三郎殿を参陣させておられませぬ。
上野国主家をおつぎあそばされた三郎殿が、後々困るようになることを
遠慮されておられるのではござりませぬか」
ほお。
「そういえば、関東には、われらを出陣させるが、
三郎殿は越中に出陣じゃな」
「三郎殿が、上野国主家を継げば、北条も喜ぶのではございませぬか、
実の弟なのじゃから」

「もともと、山内上杉家は、兄弟で上野・越後を代々治めておったわけじゃ
から、その昔に戻さんと考えておられるというのは、その通りかもしれぬな」

22 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(2+0:8) :2014/02/02(日) 16:55:40.32 ID:JkDNU2ZV
第五話「春日山」(4)

「お館様は、喜平次様と三郎殿の御兄弟が仲良く、
助け合っていってもらいたいとお考えなのでございましょう。
それがしも、そうなることを願っておりまする」
ここで、兼続、声を潜める。

「しかし、この世は一寸先は闇でございまする。
最強武田が、織田ごときに敗れるようなことがありまする。
お館様の御身に何かあるやもしれませぬ」
「ううむ。この間中風になられたからのう。
お体が心配じゃ。もう少しお酒を控えてくださればいいのじゃが」
「お館様は、高潔で高い理想をお持ちでございまする。
下り果てたこの濁世では、思うに任せぬことも多く、
お酒で憂さを晴らしておられるのでしょう」

「ご覧くださいませ。
これは、三月に定められた軍役表でございまする」
樋口与六兼続、確かに若いが、恐ろしい男のようである

23 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/02(日) 21:15:49.99 ID:JkDNU2ZV
第五話「春日山」(5)

「われら上田衆は、お父上様の横死以降、
分散配置させられ逼塞を余儀なくされておりましたが、
喜平次様が、正式な御養子となったことで、
家中でも最大級の戦力を誇る上田長尾家として再編されました。
しかし、われらの勢力が伸長することを快く思わぬ勢力もございまする」
「古志長尾じゃな」
「御意。しかし古志だけではございませぬ。
上田衆憎しと思うものが、三郎殿を擁立するやもしれませぬ」
「誰じゃ」
「今はわかりませぬ。敵になるか味方になるか。
しかし、絶対的な味方は作っておくべきでございまする。
たとえば、直江信綱殿などでございまする」
「そうじゃな。そなたのいうとおりじゃな。
わしも心得ておかねばなるまいな」

「また、三郎殿とは疎隔を作ってはなりませぬ。
敵につけいれられまする」
「わしにとっては、義理の弟じゃ。
華のことを思うと、争いたくはない」

「もちろんそのとおりでございまする。
今、話したことは万一の遠慮でございまする。
お心に留めておいていただければ有難いです」

24 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/02(日) 22:54:45.31 ID:JkDNU2ZV
第五話「春日山」(6)

「ところで、そなた謙信公に長篠の戦のこと、
直接報告してはくれぬか。わしが段取りをつける」
「はっ。それがしの方から、お願いしたいと思っておりました。
武田と共同して、織田を攻める話もございますし」


「樋口与六殿、参りました」
小姓にいざなわれて、謙信の面前ににじり寄る兼続。
「そなた、長篠まで、行ってきたそうじゃな」
そういうと、謙信はすくっと立って、縁側に座った。
夕日に照らされた横顔が神々しい。
緊張する兼続。
「そなたは、酒はいける方か」
手招きする謙信。
ポンポンと縁側を叩く。
ここに座れということか。
なんか、緊張しすぎて、吐きそうじゃ。

25 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/04(火) 22:54:21.62 ID:tM05rJmW
第五話「春日山」(6)

「わしの杯を取らせよう」
で、でかい。これが謙信公愛用の馬上杯か。こんなに飲めるかな。
謙信公に酒を勧められ、うやうやしくいただきながら、
信濃潜入の顛末を話す兼続である。

「ふうむ。高坂が、そう申しておったのか。ふふふ」
やはり、高坂殿は謙信公の性格を読んでおるのじゃな。
北信に兵を駐留させておくことができなくなったといえば
謙信公は、あえて攻め込もうとはすまい。
弓矢に傷がつくとお考えになることを、読んでおるのじゃな。

「信長より書状が届いておる。これじゃ」
ふむ。

26 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/05(水) 22:37:48.48 ID:rMT1vi2b
第五話「春日山」(7)

 信長畿内そのほか北国、南方の儀につきて取りまぎれ候きざみ、武田信玄
 遠、三さかいめへ動き罷り出で候いつ。
 いつに候とも手合においては討ち果たすべく候由あいこしらえ候あいだ、
 信玄断絶候条、残り多く候いく。四郎その例にならい出張候。
 まことに天与の儀に候間、思惟浅からず取り懸けてことごとく討ち果し候。
 四郎赤裸の躰にて一身北げ入り候と申し候

 なになに。
 信玄を討ち果たす機を狙っていたのに、死去したので残念じゃった。
 勝頼が出陣してきたので、慎重に作戦をたてて殲滅した
 勝頼は単身赤裸のような有様で逃げ去った

「勝てば、なんとでも言えるということでしょうか」
 三方ケ原のときは、滅亡寸前まで追い詰められておった癖に。
「わしを威圧しようとしておるのじゃろう 」
 謙信公、お酒が廻ったせいか、滑らかに口も動く。
「もう一通、同じ日付で石山本願寺・蓮如よりも書状が来ておる
小姓が持ってきた書状を読む兼続。
なんと。
「これは、本願寺からの和睦申し入れではござりませぬか」
なんと
「北陸の一向門徒が、味方になれば、京への途が開けまする」
やはり、長篠における武田の敗戦で、
本願寺もお館様に頼らざるをえなくなったわけじゃ。
これこそ、天の与えたもう好機じゃ。
「本願寺の背後には、毛利と将軍様がおられるのではございませぬか」
お館様も、信長と戦うことを考えておられるのじゃろうか。
「しかし信長の鉄砲隊に勝てるのでしょうか」
ついつい心配していることを口に出す兼続。
謙信公は、静かに酒を飲みながら、黙っている。

 

27 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/06(木) 22:00:16.67 ID:uVQQw/3Q
第五話「春日山」(8)

「そなた、しばらく、わしの近侍とならぬか。
喜平次にはわしの方からいうておく」

喜平次様のお側を離れるのは不本意じゃが
これは、願ってもない機会かもしれぬ。

謙信公に喜平次様を売り込み、
後継者としての揺るぎない地位を確立することができるやもしれぬ。
それに、謙信公のお側におれば、
謙信公が三郎殿のことを、どのようにお考えなのか、分かるかもしれぬ。
「有難き幸せでございまする」

28 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/07(金) 22:35:29.53 ID:HQvxhRWd
第六話「手取川」

「信長の軍勢が越前に攻め込み、
一向門徒を手当たり次第虐殺しておるようでございまする」
謙信に、直江信綱が報告している。
傍で聞いている兼続。
やはり、直江家は上杉の要じゃな。
外交・諜報を握っているのが大きい。
「越前府中は、死骸の山で空き地がない有様と報告がありました」

信長は、越前・朝倉を攻め滅ぼした後、
一向門徒に越前を奪われたので復讐しておるつもりじゃろうが
無辜の民草を虐殺すれば、民心が離反するのではないじゃろうか。

謙信は、黙って聞いているだけで、何も言わない。

29 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/09(日) 18:26:01.18 ID:gaN6X/H3
第六話「手取川」(2)

「こたびの越山の目的はなんじゃ」
天正三年九月、
上野・沼田城で謙信の率いる主力の後詰として待機している上田衆。
連絡のために謙信より派遣された兼続に景勝が訊いている。

「桐生を攻めておるようでございまするが、
真の目的は、佐竹・宇都宮などとの同盟再構築のためじゃと思います」
ふうむ。
「もともと佐竹・宇都宮・里見などと、連携して、北条と戦っておった
のでございまするが、信玄の駿河攻めで、今川・武田・北条の三国同盟が
瓦解し、北条は、われら上杉と同盟を結ぶこととなりました。
このため、反北条の佐竹などとの連携が切れてしまいました。
氏康が死んだとき、北条との同盟も壊れましたが、
佐竹・宇都宮との連携は回復しませんでした」

「ふうむ。越中を攻めると思っていたから、意外じゃと思ったが」

「長篠敗戦の影響がここにもでておりまする。
北条の攻勢が強まり、危機感をもった佐竹なども、
再びわれらとの連携をもとめておるのでございまする」

30 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/09(日) 21:01:02.47 ID:gaN6X/H3
第六話「手取川」(3)

「関東を固めてから、思う存分、信長と戦うのではございませぬか」
ふうむ。
「お館様は、上野を回復して、上野国主家としての山内上杉家を再興、
三郎殿をその当主とし、
上杉・北条・武田の三和を考えておられるのではございませぬか」
ふうむ。
「お館様が、若いころより、苦労されてきたことが、
実を結ぼうとしておるのでございまする。
ただ、佐竹・宇都宮・里見など、北条の侵略に怯えている関東諸豪族を
安心させてやる必要があるので、和睦の前に北条に対する大攻勢が必要
なのでしょう。此度の出撃は、その事前工作ではありませぬか」
ふうむ。
「そなたは、御館様のお心の内をよくわかっておるようじゃな」

31 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/16(日) 22:19:58.76 ID:EeSnG1PT
第六話「手取川」(4)

天正四年正月、春日山の景勝の屋敷で景勝と兼続が軍役表を前に密談している。

 一門・客将衆 上杉景勝・山浦(村上)国清・上杉(長尾)景信
        上条政繁・琵琶島弥七郎・山本寺定長

 譜代・旗本  山吉・松本・栃尾本庄・直江・北条
        河田・神余・吉江・香坂

 国人衆    平賀・新津・斉藤・千坂・柿崎
        中条・黒川・色部・小泉本庄・水原・安田・竹股
        新発田・加地

「やはり、カギとなるのは、直江でしょうな」
「うむ。旗本を束ねておるしな」















     

32 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/23(日) 23:12:34.90 ID:Av2qSU3E
第六話「手取川」(5)

「謙信公は、どのようなお人なのか。そなたは、どう見ておる」
「ご自分に厳しく、他者にはお優しいお方じゃと拝察しておりまする」
よく、わからないのだ。
ほとんど、毘沙門堂に籠られて、一心不乱にお祈りをされておられる。
家臣の報告を聞くときも、黙ってきいているだけ。

「わしにも、わからぬ。この世の乱れを正したいとお考えなのじゃと
拝察しておるが、どうなのかな」
「関東管領のお役目と、将軍様からの上洛要請、
筋目を大切にされておられるから、二つとも果たそうとしておられるのでは
ございませぬか」
「謙信公のお役に立ちたい。そのためにも、お心の内をしりたいのじゃ」
景勝様の後継者の地位を固めるためにも、必要なことじゃな。
それがしが、もっとお心の内をお話しいただけるように
頑張らなければならないな

33 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/03/02(日) 23:31:15.55 ID:f6CsHjIs
第六話「手取川」(6)

「御館様は、神仏にすべてを委ねる生き方を貫いておられまする。
私心なく、邪念なき、生き方を貫いておられまする。
ご自分が、毘沙門天の化身であることを信じておられまする。
それゆえ、戦場では、鬼神のような働きができるのでございまする」
「そうじゃな。永禄四年の下野唐沢山城救援の時は、三万五千の北条勢が
包囲しておるにもかかわらず、四十五騎で、包囲陣を突破して、城にはいった
ときいておる。まさしく、毘沙門天じゃな」

「しかし、私心なく邪念なく、という生き方は、政略をまったく考えておられ
ないようにも見えて、そこが、諸将に理解されにくいところでもありまするな」
「そうなのじゃ。御館様は、何も欲しておられぬ。そういう考えを、私心邪念
と、否定されておられる。それゆえ、戦はすべて、受け身で始まっておる。
御自ら、仕掛けて主導権を握ることがないゆえ、個々の戦では勝つが、結局
領土を取られておる。北信も上野もそうじゃ。
それが、惜しいのじゃ」

34 :日曜8時の名無しさん:2014/03/22(土) 23:50:43.26 ID:dJxMyH9Q
第六話「手取川」(7)

天正四年三月、本願寺の使者が春日山に来る。

「宿敵一向門徒と、ついに和睦じゃな」
「これで、京への道が拓けることになりまするな」
ついに、上洛戦じゃ。
「わしも、お供したい。
そなた、すまぬがお館様にお願いしてくれぬか」
「わかりました」

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